アガチス通信vol.42 〜ハルマヘラ島訪問記3〜

午後からのミーティングには各セクションの責任者も集められ活発な議論が交わされました。キャンプマネージャーから当キャンプにおける現状、問題点、将来性など一通りの説明を受け、それに対して疑問点や我々が望むことなどを納得いくまで話し合い見えてきた答え。それは・・・


(左から3人目がキャンプマネージャー)



(1)安定供給に関して
年間を通して6,000ミリ近い屋久島並みの降水量があるハルマヘラ島において、原木の安定供給は非常に難しいということが分かりました。これを踏まえ、我々に出来る対策としては、「毎年7月ごろから10月ごろまでの乾季の間に可能な限りアガチスの伐採を進め、残りの半年間で比較的搬出が楽なMLHの生産を進めてもらう」という方法についてサプライヤーに協力依頼を打診し続ける事。しかし当然これだけでは不十分で、昨年のように異常気象で1年を通じて雨が降り続くようなことがあると今後もアガチスの生産が極端に落ち込む時期があることも想定されます(2010年アガチス原木出材実績1,100㎥)。ですから、雨期を味方につけられるような出材、つまり天候に左右されないカリマンタン島など(川出しするためむしろ雨は歓迎)における新規供給ソースの確立というのも急務だと思います。



これらを勘案すると、ハルマヘラプロジェクトにおいては<1,000㎥/月×6カ月間=6,000㎥/年>というのが妥当な数字だと思われます。ただし、6,000㎥の中身も重要であり、あまりにも細い丸太だけ出てきても製品を作る上でいろいろと不都合が生じてしまうので、丸太のクオリティーやプロポーションに関しては伐採エリアの調査報告書などを基に、その都度綿密な打ち合わせが必要です。



(2)継続性に関して
インドネシアにおいてはHPH(通称、ハーペーハー)といわれるインドネシア政府が発給する公式の伐採権を取得した会社のみが伐採業務に携わることが出来ます。しかし、伐採権さえ取得してしまえばその後は好き勝手に伐採できるというわけではなく、そのHPHに基づき毎年RKT(通称、エルカーテー)といわれる年次伐採計画を立て、その計画が適切かどうか林野庁の検査を受け、承認が得られて始めて伐採が可能になるというシステムになっています。毎年の伐採計画エリアにどの程度のアガチスが生息しているかは毎年12月〜2月ごろに行われるエリア調査ではっきりするとの事ですが、長年キャンプを率いてきた現キャンプマネージャーの話だと、今アタックしている山系には間違いなくアガチスは相当残っており、ハルマヘラ全土及びモロタイ島など未開発の近隣諸島にもまだまだアガチスはある!との力強い言葉をいただきました。実際、今のエリアに関してだけでもHPH自体は20年以上残っているとの事で、そのポテンシャリティーは十分にあると判断して良さそうです。尚、この継続性に関して補足をすると、HPHには伐採後の植林が義務ずけられており、今回視察したキャンプでも14キロ地点において苗の育成がしっかりと行われていました。ただやみくもに伐採するだけでなく、「伐る⇒使う⇒植える」というサイクルがあってこその「継続性」であるということを改めて認識しました。


(左上アガチスの苗木、右上メルサワ、左下ビンタンゴール、右下にヤトー。ちなみにアガチスは2cm/年のスピードで成長するとのことで、早ければ30年後には伐期を迎えられます)



(3)次回の船積みに関して
今のところ天候は全く問題なし、機材もスタンバイ済み、あとは油が順調に入れば道造りを最優先に一気に生産が始められる状況です。今回のエリアについては10日程で1,500㎥前後の出材は可能との事でしたので、早ければハリラヤ(イスラム正月)明けの9月中旬ごろには船積み出来る見通しです。尚、今回のエリアには全部で6,000㎥のアガチスが生息しているとの事ですので、年内にはある程度まとまった量の丸太が確保できる見通しです!




と、ある程度の裏付けを基に私なりの結論をまとめましたが、それでも100%確信が持てないのは、やはり伐採している生の現場を見ていないからでしょうか。しかし、この拭い去れない不安な気持ちはキャンプマネージャーと作業員たちが、1か月後に「船積み」という形でしっかりと答えてくれると信じています。。。



さて、3日間のハルマヘラ島生活を通じていろいろと貴重な経験をし、そして感じることが出来ましたが、やはり1番の収穫は、キャンプで働くメンバーたちと顔を合わせたことで、「このプロジェクトは多くの人たちの繋がりで成り立っている」という事を再認識できた事でしょうか。アガチスを生産する側から使う側までが1つになって初めてこのプロジェクトが成り立つわけですから・・・時間の関係で書ききれていないことが多々ありますが、それについてはおいおい書いていくこととして、次回こそはアガチスの伐採現場からよりリアルな情報をお届けすることをお約束し、今回の「ハルマヘラ島訪問記」を締めくくりたいと思います。




(沈みゆく夕日を眺めながら、束の間の現実逃避・・・)


■K平■