不景気だからこそ

不景気です。めちゃくちゃ景気悪いです。老舗がバコバコ倒産してます。皆が「景気が悪いからどうしようもない」、「この現状じゃしょうがない」とボヤいています。失業率は上がり、学生の就職率は下がり、日本全体を負のオーラが包み込んでいます。


そんな時代にこそ輝く人がいます。アントレプレナーと呼ばれる人たちです。

俗に「企業家」と呼ばれるような人たちですが、ここでは「真に自立した人」と定義しましょう。確固たる信念と誇りを持ち、負の外的影響を受けず、逆境をむしろ糧とし、起業を通して自分の夢を実現しながら社会に貢献し、誰にも寄りかからず、自分の足で立つ。そんな人たちです。

アントレプレナーは不景気のせいにしません。むしろ逆にこの不景気にどうやって立ち向かおうかと闘志をさらに燃やすような人たちです。苦境や逆境をむしろ喜び、そこから活路を見出すことに半ば生きがいすら感じてしまうような、言ってみれば超“M”な人たちです。

彼らに共通することは、一般的にはマイナスと考えられているものをむしろ活かしてしまうという逆転の発想です。逆に言えば、マイナスにしかチャンスはないとも言えるかもしれませんが、いずれにしても、逆境を利用するのがアントレプレナーの特性ともいえるでしょう。

アントレプレナーセンター代表の福島正伸さんの講演で紹介された、こんな話があります。



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とある自動車メーカー「M」に就職した男性がいます。彼は入社当時から「Mの車を世界中に売るんだ。この素晴らしい車を1人でも多くの人に知ってもらうんだ」いう熱意を持ち、メーカーに入社しました。ところが、彼は営業部ではなく、自動車をテストする部署に配属させられてしまいました。

男性は来る日も来る日もテストにあけくれました。砂利道を限界速度で走りぬけ、時速100キロを超える速度で急カーブを曲がり、マイナス30℃の氷土や灼熱の土地を何時間も走り、車の限界をテストしていったのです。車は何度もひっくり返り、体中に傷跡を刻んでいきました。

ところが、彼は一度も泣き言を言いませんでした。彼はアントレプレナーシップの持ち主だったのです。「この部署じゃ車は売れない」、「配属が変わらないと無理だ」、「もう辞めたい」なんて泣き言は言わずに、むしろ、今のこの最悪な環境を逆に利用するのです。

毎日繰り返される限界走行は、知らず知らず彼の運転技術と精神力をも限界まで押し上げていきます。そして彼は、とあるラリー大会に出場することになりました。そこで、驚くべきことが起こります。プロのドライバーが運転する他のメーカーが次々リタイアする中、社員が運転する「M」の自動車が快走を続けたのです。

社員が自社の車を駆り、プロを相手に連戦連勝。当然、この車にも注目が集まりました。スピードと剛性を兼ね備えた“最強”の自動車として、世界中で売れに売れまくりました。彼の「Mの車を世界中で売りたい」という夢が叶ったのです。世界中に車を売りまくった最強の営業マン誕生の瞬間でした。パリ−ダカールラリーの伝説的存在、三菱パジェロを駆る篠塚建次郎、その人です。
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ここで言いたいのは、自立精神を持っている人は、環境を逆に利用し、そこに価値を見出し、そこで得た価値を周囲に与えつつ、自他ともに発展させていってしまうということ。周りの人たちまったく違うところを向いているので、そこにオンリーワンの価値が生まれるということです。

そうして生まれたものだからこそ、人は、その姿に、あるいはモノやサービスに触れ、感動し、共感します。そして、ある人は投資することで、ある人はその商品を購入することで、またある人はそこに参加することで、その人にエールを送ろうとします。仲間ができ、チームになり、組織が生まれ変わり、商品が売れはじめ、夢がまた実現へ一歩近づくのです。


三菱自動車プジョーの支援を受けるという報道などもあり、「三菱苦境」のイメージが強いのも事実で、自立精神なんかより金融政策だ!! というのも当然のことなのですが、「心の持ち方」という意味において、この篠塚さんの精神には何かとてつもなく大きなヒントが隠されているような気がします。

アントレプレナーシップとは、何も新しいビジネスを始めなければならないわけではありません。篠塚さんのように社員でありながら実践でき、心構え次第でいつでも始められるものでもあります。しかも、「マイナスを活かす」という考えは、人だけではなく、モノにも、デザインにも応用できるものでもあります。


新聞を見ると気が滅入ります。日本経済ヤバいです。しかし、アントレプレナーは、今うずうずしています。楽しくて仕方ないんです。もしかしたら、アントレプレナーなんて「気の持ちよう」でしかないのかもしれませんが、不景「気」に対抗できるのはやはり「気」で、気の持ちようというのは案外すごく核心を突いているような気もします。

この木材業界に必要なのは(たぶん他の業界にも)、まさに、一人一人が自立する、ということではないでしょうか。政治にしても経済にしても人材にしてもなんにしても、日本人は何か別の存在に依存することが得意ですが、今必要とされているのは、ほんとのところでの「一人一人」が、自立することだと思います。



今日ここで僕がお話したことは、僕が上海時代に参加した「アントレプレナーシップ講座」で学んだことです。なので二番煎じな感じは正直否めません。それに、新人の僕は業界の事情を知らないシロウトでもあります。ですから、今日のブログを読んで「けしからん」と思った方もいるかもしれませんが、夢も語れない日本って何だ?という思いも同時にあり、甘ったるいことは承知で確信犯的に書いています。

「雨だなぁ〜イヤだなぁ」って憂鬱になるより、「やった雨だ!!」ってなったほうが楽しいし、じゃあどうすれば雨が楽しくなるかなって考えるのが、アントレプレナー。だから言ってみれば、人生や仕事を楽しくできる人生のあり方、というものがアントレプレナーシップなのかもしれません。

みんなが憂鬱になる雨がどうやったら楽しくなり、そこにビジネスが生まれるか。そんなことを考える癖を持つと、アントレプレナーへの道のりは俄然縮まります。不景気を嘆くより、逆転の考え方を身につけたほうがいい。僕はそう考えているので、今日も、「足の骨が折れた時、どうしたら楽しくなり、それをビジネスに結び付けられるか」みたいなことを考えています。
■K松■



●参考
株式会社アントレプレナーセンター http://www.entre.co.jp/
海相互支援組織代表ヂョン石井さんのブログ http://blog.livedoor.jp/john1984jpn/


●参考図書

どんな仕事も楽しくなる3つの物語

どんな仕事も楽しくなる3つの物語

ラリーバカ一代

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