ポスト原発の「森」のあり方


原発事故を契機に、「エネルギーをどうするのか」という問題に関心が集まっています。木材の需要は相変わらず低調ですが、太陽光発電システムなどには注文が殺到しているようで、クリーンなエネルギーには、新たなビジネスチャンスも生まれているようです。

政府はこれまで、原子力発電の比率を2030年までに50%以上にするとした「エネルギー基本計画」を掲げていたましたが、今回の原発事故によってすべてを見直さざるを得ない状況になっていますね。そこで俄然注目が集まっているのが、自然エネルギーのひとつとして注目を集めている「バイオマス発電」。


バイオマス発電」とは、間伐された木材、樹皮、木くずなどの木質材料(ペレット)を燃やすことでタービンを回し発電する発電方式。福島県内でも、震災前ですが、東北電力グループで電気設備工事大手のユアテックが、製紙工場や火力発電所などで用いられる木質バイオマス燃料のチップ工場を福島県二本松市に新設すると発表していました。

このほか、相馬共同火力発電の新地発電所(新地町)でも、石炭にバイオマス燃料を混ぜる発電をスタートさせる予定になっていました。同発電所では年間約500万トンの石炭を使っていましたが、バイオマス燃料14万トンの導入で石炭10万トンを減らせる見込みで、これにより、CO2の年間排出量のうち約2%にあたる23万トンを減らせる予定だったそうです。(出典:朝日新聞

こうした動きは、原発事故を受け、ますます活発化していくことが予想されています。特に、福島県は、新エネルギーを推進する大義名分もありますし、「エネルギー特区」のような優遇策が施行される可能性もあります。大胆な復興策が生まれれば、そうした研究機関や企業が集約されることも期待されます。(というか、そういう方向で考えて欲しいものです)



バイオマス発電をわかりやすくした図



農林水産省平成23年1月28日に公表した農林水産統計によると、平成21年の木材生産額は、木材生産量の減少と価格の低下により、前年度と比べ12.8%減の1860億7000万円。7430億8000万円だった平成元年と比較すると、木材生産額は、なんと4分の1程度まで落ち込んでいます。

復興住宅需要の高まりで、国産材にも注目は集まると思いますが、福島第一原子力発電所の事故を受け、政府がエネルギー政策を見直す姿勢を見せ始めたことで、衰退の一途をたどっていた国内の林業の状況が変わることになるかもしれません。

これまでにも「バイオマス発電」による発電事業に参入する企業はみられましたが、その多くが赤字経営を余儀なくされていました。製紙、セメント、電力などの企業が二酸化炭素を削減するため、補助燃料に木質チップの使用量を増やしたことで、バイオマス発電の燃料となる木質チップの価格が高騰したからです。中小企業や林業家には厳しい状況が続いていました。

政府は、自然エネルギーで作る電気の買い取り制度を導入する方針を掲げ、法案の成立を目指していました。菅総理が政治家になった当初から考えていた、いわば「肝いり」の制度なのだそうです。2008年には、未利用材を燃料チップに加工する施設へ補助金を支給する制度の運用も始まっており、林業復活に向けた準備が整いつつあります。

原発推進派の議員もまだまだいますし、政局もどう変化していくかわかりませんが、いずれにしても、市場の動きを見る限り、今回の原発事故が今後のエネルギー供給の大きな転換点になることは間違いなさそうです。

復興住宅需要も期待できることはできますが、「継続的な林業」を考えたとき、ポスト原発時代のクリーンエネルギーを“森から考えていく”ことが、新たな木材利用の活路を見出すことに繋がります。豊かな森林資源を有効活用するためにも、「木材=資源」という考えを徹底して訴えていく。それが、木材の価値を高めていくことにも繋がるのではないでしょうか。


K松