地産地消の先へ

こないだ金曜日にブログを更新すると言ったばかりですが、新人のK松です。
滝口木材に入社してから、日刊木材新聞のチェックを日課にしています。なにぶん木についての知識がなく、業界の動向にも明るくない僕。「とりあえず読んで気になったところはメモっとこう」くらいのテンションではありますが、今日は、その新聞記事で気になったことを書いてみたいと思います。


−今こそ地域材を使おう
最近、「地域材」という言葉がたくさん目に入るようになってきました。日本の各地域で取れた木材をその地域で使う、いわゆる「地産地消」というやつですが、これが最近の潮流のようです。土曜日の新聞にもこんな記事が。

2×4住宅のスタッドに地域材活用
三井ホームのFC会社4社が提案した「地域材を使用した枠組壁工法住宅」が、平成21年第2回の長期優良住宅先導的モデル事業に採択された。2×4工法住宅のスタッドに地域材を活用することを提案したもので、北海道ではトド松製材、長野ではカラ松FJ材、四国では桧FJ材、南九州では杉または桧のFJ材を採用することを提案した。(11月14日付)

厳しいなかにも明るいニュース東京木材相互市場社長、磯貝英一氏のコラムより抜粋)
港区が来年9月から同区内に建てるオフィスビルやマンションの内装材に国産材を使用すればCO2削減に協力したという認証状を発行するという記事が、9日付の日刊木材新聞に掲載されていた。(中略)同区が認証状を発行する木材は合法木材もしくは各種認証材というから、合法木材や各種認証材の流通が増加するようになるのではないか。(11月14日付)

「国産材を使うこと=環境問題に貢献している」とは簡単に断言できないと思いますが、「国産材を使えば国内の林業を保護することにもなるし、海外の木々を乱獲することもないので環境保全につながる。だから国産材をどんどん使っていこう」という論理は僕にも大変理解できますし、どんどん推進してもらいたいと思います。

北海道では、施主むけに、植林・伐採・製材・建設と、1本の木が家に生まれ変わるプロセスを見てもらうツアーなども行われているそうです。地域材を使うということは、郷土愛を醸成するだけでなく、木のよさや、木に刻まれた物語に触れる機会にも繋がりますから、実に素晴らしいアイデアだと思います。


地産地消は推進すべきだが・・・
一方で、グローバルな市場との付き合いをゼロにすることはもはやできないのが現代社会です。小名浜で獲れた旬のサンマを食べつつ、インド洋で養殖されたマグロも安く食べたいのが私たち。こだわりの一品だけを使うことができれば最高ですが、庶民の生活では、大間のマグロや氷見の寒ブリばかり・・・とはいきません。

となると、大事になってくるのは、やはり「地のもの」と「それ以外のもの」を、どううまく組み合わせ、自分のライフスタイルに組み込んでいくか、ではないでしょうか。そのためには、さまざまな製品の特徴を理解した上で、適材適所に使うことが必要になりますが、それこそ、消費者の知恵だと言うことができるでしょう。

ですから、地のものをPRする企業も、外国産の価値を伝える企業もなければバランスが取れない。品質は若干劣るけれども、こういうときに使うのなら役に立つよとか、確かに日本のものは見た目がすばらしいけれども、目に触れない部分だから外国産の方が合いますよとか、その特性をPRしていくことで、消費者の「モノを見る目」が養われていくのだと思います。

最近では、「外国産」ということに企業側が負い目を感じるのか、中国産だとか、東南アジア産だということを変に隠そうとする企業もありますが、安いものにも、外国産のものにも、本来それはそれで素晴らしい価値があるはずです。それを伝えないままで、「安いから売れるだろう」というだけで物を売るというのは、企業の社会的責任を果たしていることになりません。

アガチスという南洋材を取扱う滝口木材も同じで、アガチスのPRもしつつ、こういう部分には国産材を、こういう部分には南洋材を使うのがいい、という知恵をどんどん発信していかなくてはならない。そうでなければ、東南アジアで木を切ってくれている職人さんや製材工場の職人さんたちに申し訳がたたないし、木材を取扱う会社のとしての責任が果たせません。(社会的責任ということであれば、もちろん現地の森林を少なからず伐採している以上、それ相応の責任を果たし、それを社会に伝えていく責務(CSR)も同時にあるのは当然のことです)


地産地消の先にあるもの
僕は、地産地消を否定したいわけではありません。逆に、相当な地産地消推進者です。しかし、地元のよさに気づくには、客観的に外のモノの良し悪しを知らなければいけない。また、客観的にモノを知るということは、単に地元を礼賛することではなく、両者の違いを認識した上で、両方の価値を(できれば“いいもの”として)理解するということでもあります。

海外に行って日本を客観的に見られるようになり、日本もその国も好きになったという留学生と同じで、両方の有効な使い方や特性がわかってはじめて、両者のよさを理解し、「使いこなす」ことができるのではないでしょうか。繰り返しになりますが、「使いこなす」ことが、グローバル社会に生きる消費者の知恵だと僕は思います。

地域礼賛が進むと、地域に固執するあまり、木を見て森を見ずということになってしまいかねません。外国の森を伐採してまで木を使う必要なんてない。海外の木材を使うことが悪だ、という論理が生まれてしまいます。その先にあるのは、排他主義です。

ですから、滝口木材は「南洋材」のよさをどんどん伝えていかなくてはなりません。もちろん、業界の方は経験がおありですからアガチスの正負を認識しておられるでしょう。しかし、環境問題や地域の問題が、より消費者の身近なものになっている現代においては、生産者にもっとも近い立場にいる僕たちこそ、消費者に対して積極的に語っていかなくてはならないと思うのです。それが「責任」だと。

「地域材」も素晴らしい。「南洋材」も素晴らしい。そうなったとき、施主も僕たちも生産者も地域も笑顔になれるのではないでしょうか。「三方よし」いや「四方よし」!! それを目指さなくちゃいけない。う〜ん、海外のものを扱うという国を超えた責任、本当に重いものですね。「まずは明細書の書き方を覚えろ」と突っ込まれてしまいそうですが、今日は、長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!!
■K松■