時代は変わった・・・

いやぁ、先日、後輩のK松君がこのブログで書いた「里山レポ」。素人目線ながら非常に的を得ていて、読んでいて妙に納得してしまいました。でも、こういう素人感覚ってこれからの時代には絶対必要だし、これから何か始めようとする時のヒントが必ず潜んでいると思います。それで私も、私なりに「材木店」の意義を考えてみたのです。

皆さんの周りには「○○材木店」とか「○○木材」という名前の木を売るお店があると思います。でも、そこで一般の消費者を目にする事はありません。


−なぜ材木店が埋没したのか
衣・食・住でそれぞれ比較してみると、八百屋、魚屋はもちろん、スーパーやデパートは毎日お客さんで賑わっています。ところが材木屋には人がいない・・・。そりゃ、八百屋や魚屋は毎日の生活に関わっているけど、住宅は一生に一度の買い物だから・・・ってそれは百も承知です。

でも、そもそも「木は住宅だけ」という考えがおかしいと思いませんか? ここに「木」と「日本人」の距離が遠ざかってしまった理由の1つがあると思います。だって、私たちの生活の中にはこれほど木が使われているのに、木が語られるのは、住宅が語られる時位しかないのですから。

理由は簡単です。1つは中間業者(輸入商社・卸し・問屋)が全て材木屋任せにし、消費者に向けたアピールをしてこなかった事。2つ目はその全てを任せていた材木屋さんが一般の消費者に向けたアピールをしてこなかった事、この2つです。


−材木店の現状
一部のお店等を除けば、定期的なイベントもなく、私の認識では材木屋さんというのは、大工さんや工務店さんに売り込む程度で、一般の消費者との接点をあまり持っていません。結局のところ、消費者との接点作りは、大工さんや工務店の実力頼みになっていたのです。つまるところ、誰も消費者に向けたアピールをしてなかったのではないでしょうか。

たとえば、無垢の木はハウスメーカーではほとんど使いません。理由は後々狂う可能性があり、クレームを事前に回避する為からです。材木屋さんが出る幕なく、こうした「自社の商品優先」・「クレームに対する行き過ぎたリスク管理」だけが先行し、木材の健全なPRが妨げられ、結果的に消費者に有利な情報が阻害されていたのです。

地域の材木店が埋没するにつれ、大手のハウスメーカーを相手にしている大手の建材メーカー等が流行を敏感にかぎわけ、常に新しい商品を開発しています。それが流通ルートの短縮を生み出し、材木店を経由しない新しい木材流通経路を形作るに至りました。ただでさえ住宅着工数が減っているのに、材木屋の意義がますます薄れているのです。

さらに、このすっきりしない流通構造に「ホームセンター」が割って入ってきました。皆さんも時間がある時は是非ホームセンターに行ってみて下さい。きっと想像以上の種類の木に出会えると思います。下手な材木屋さんより品数は豊富です。昔は材木屋さんから材料を調達していた大工さん達が、ホームセンターに流れ、「必要な物を必要な分だけ」買う時代になりました。


−問われる「材木屋」の存在意義

昔は(といっても3年ぐらい前まで)毎年120万戸近い家が建っていました。しかし、昨年は住宅着工が3割近く減りました。これからは少子化が進み、住宅着工数は右肩下がりで推移していくことが予想されています。しかも大工さんたちもホームセンターに流れる時代です。材木屋はやり方を変えなければ間違いなく滅びます。今、その兆候が随所に現れてきているんです。

そんな中、いわきにも新しい動きが出てきました。いわき市湯本にある「正木屋材木店」さんなどは、インターネット上に「いわき家ナビ」を開設し、一般ユーザーに対して住宅や木材の情報を広く提供しています。こうした動きは大歓迎。他の材木店も、「開かれた材木屋」を目指していくことが求められます。

「いわき家ナビ」を例にとると、現在のところは木材住宅をPRする内容がメインの様です。しかし、いずれはこうした情報サイトが、たとえば「いわきの木ナビ」のような形になり、(建材は一旦置いておいて)地域の山や地域の木に触れられる機会をどんどんと提供し、地域全体を巻き込んだ活動に膨らまなければいけません。全国の流行に左右されない「いわき型の木材消費」に繋げるためには、材木屋の意識改革もますます必要になります。

幸運にも、木材業界全体が“住宅以外の分野”に軸足を移そうと試みている段階です。ですから、この機会に「木」の使い道を含めて、“どうしたら消費者に木の良さが伝わるか” をみんなで一緒に考えなければいけません。もちろん、住宅建材としての木ではなく、まさに「木」を伝える活動です。やり方次第ではいくらでもチャンスはあります。まずは、材木屋自身が、もっと消費者に寄り添った存在になれるように、「入りやすい材木屋作り」から始めてみてはどうでしょうか。

■K平■