アガチス通信 vol.15

ひさしぶりのアガチス通信、今回はK松がお送りします。


アガチス通信では、これまで、アガチスという木の製材の過程や、インドネシアのグルメ事情、
アガチスの使われ方などを紹介してきましたが、
今回は、アガチスの意外な用途を紹介しながら、
感じたことをちょっとまとめてみました。



じゃん!! これ、なんだと思いますか?

アガチスの廃材(きれっぱし)を何百個と張り合わせていって作った壁なんです。
まぁ壁というか壁パネルというか、いずれにしても
かなりいい味出してますよね。


こうして時計も一緒に飾ってみるときれいです。


この廃材、製材後に出た棒状の小さな切れ端を貼っていっただけなんですが、
ゴミとして捨てられるはずだったものが
こんなにきれいなインテリアになっちゃうなんて驚きですよね。


 


遠くから見るとこんな感じ。
右側の写真のほうはまだ未完成ということですが、
ちょうど小さなタイルをたくさん集めてモザイク画のような作品を作る感覚でしょうか。


持ち主の方が、アガチスという木が好きで、廃材を集めては1個1個張り合わせて、
ここまで仕上げてしまったのだそうです。
こんな使い方も、あるんですね。





さて続いてはこちら。アガチスの天井です!!!


アガチスという木は針葉樹なのですが、杉などによく見られる「フシ」がなく、
針葉樹独特の「木目」もあまり濃くありません。
だから、すっきりと上品な雰囲気に仕上がるんです。


なので、アガチスは洋室に特に合う木だ、と言われています。



デザインのすっきりした洋室に、スギやマツと言った木目の濃い材を大量に使うと、
どうしてもうるさく感じてしまうのですが(もちろん個人差はあるけれども)、
アガチスの目立たない、それでいて一枚一枚違うわずかな色の違いが
落ち着いたコントラストを生み出してくれるんです。


アガチスを天井に使ってしまう、というのは、
正直僕自身も思い浮かばなかった用途なのですが、
こうして自由に、その人のアイデアで木材を使うというのが、
自然なスタイルなのかもしれません。


しかも、驚くべきことに、この天井に使われている板、
もともとは将棋版用に製材されたアガチス材を使っているんです。



さぁここからが本題です。

上のパネルも、下の天井板も、要は、本来の用途とは違う使い方をしています。パネルは端材を、天井には将棋版の余りをそれぞれ使っているのですが、大事なことは、木材は使い方次第でどうにでも活かすことができるということなんです。

特に、天井板のほうは、樹液が固まった跡である「赤シブ」という欠点が見られ、通常であれば流通の過程ではじかれてしまうような板がたくさん使われています。でも、この天井を見ると、これまで欠点と考えられていた部分はまったく気になりません。かえって木に表情を与えてくれるように、僕には見えます。

この天井を業界の人が見たら「なんだこんな使い方して!」なんていう人が多いかもしれませんが、その商品の価値を決めるのは、問屋さんでも業界の人間でもなく、それを使う消費者だということです。



僕は木材業界に入って半年しか経っておらず、あまりデカい口は叩けませんが、木材業界の人間が自ら木材の可能性を奪ってきてしまったのではないかと考えさせられることがよくあります。

たとえばこの「赤シブ」。少しでも入っていると、見栄えが悪いと言われてりクレームの対象になったりするのですが、消費者がその赤シブを気にするかどうかというのは争点になっていないんです。あくまで、「業界の人間が見て」気になっているわけです。

僕は、むしろ、こうした欠点と呼ばれるものにプラスの意味を与え、広く木材を伝えていくことが木材業界の人間に与えられた仕事だと思いますが、現実には「クレームの対象になりそうなもの」を事前に徹底的に排除していくことに終始する人たちが多いようです。

ほんの数年前、スギに入ってしまう「フシ」は徹底的に嫌われていたそうです。フシがあるがゆえにゴミ同然の扱いをされたものも少なくありませんでした。それが今では、「フシ」があったほうが味が出る、使ってみたら意外と味があっていい、と言われるようになりました。

デニムジーンズの世界を見てください。今は、わざわざ中古加工をして出すジーンズがむしろ主流になってきたりしている。業界の人間がこれまで「不良品」だとしてきたものが、消費者の使い方次第で人気商品になるなんてことは、よくあるのです。



今回紹介したアガチスの壁、アガチスの天井を見て、木材には無限の使い道があり、それを考えることが木材業界の人間の仕事なのだと思い知らされました。消費者の声をつぶさに拾い上げ、欠点をセールスポイントに変えてしまうような大胆な発想の転換。それが今、必要なのではないでしょうか。

業界内の狭っくるしい常識に捉われることなく、自由な発想で木材の無限の可能性を引き出すこと。どうも、僕たち若手が取り組まなければいけないことが、わかってきたように思います。


K松