アガチス通信vol.29〜製材編その1〜

引き続きK平です。



今回は、具体的に「何が変わったのか」について写真を交えながら説明していきます。かなり専門的な分野ですので、多少堅苦しい内容になるかもしれませんが、どうぞお付き合いください!(そうならないように努力はいたしますが。。。)あまり興味のない方は、写真だけ流す感じで見てもらえれば充分だと思います。



木材の用途は主に、建築用材と非建築用材(木工など)の2つに大別されます。新設住宅着工が100万戸以上が当たり前だった時代は、建築用材としての需要が旺盛で、アガチスも厚板を中心によく売れました。それに比べ厚板を必要としない(薄板主体)非建築用材は物づくりをする側、いわばメーカー泣かせのサイズで、どちらかというと敬遠されてきました。(とりわけ軽くて加工性が良いアガチスは、木工用や家具の側板用としても人気があり、少量ながら薄物も生産はしておりましたが・・・)

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(建具の框には34mmや36mmの板が、窓枠は24mmの板が主に使われます)




なぜ、われわれメーカーが薄物を拒むのか、それにはそれなりの理由があります。
(1)歩留まりが悪くなる(薄板を挽く⇒ノコを通す回数が増える⇒ロスが増える)
(2)生産効率が落ちる(薄板を挽く⇒全ての工程において厚板の2倍の時間を要する)
(3)作業効率が落ちる(理由は同上)
つまり薄板を挽くことは、その分高く売れるものでない限り、正直生産するメリットがないのです・・・ (非建築用材は建築用材に比べて品質的な縛りが少ないので、厚板を中心に挽いていた時には言葉は悪いのですが、あくまで「残り物の板から出来た分だけ」しか作っていませんでした。)      薄板のアイテムを作っても、十分に利益を得られる体制作りも喫緊の課題です・・・

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しかし、これからは薄板でも加工度を高めて付加価値をつけ、その分少しでも利益の取れるアイテムを作らないといけません。「歩留まりが・・・」とか「面倒だから・・・」なんて悠長なことをことを言っる場合ではないのです!もっともインドネシアのレギュレーション(輸出規制)は年々厳しくなり、より加工度を高めた製品以外輸出が出来ないことになっていますが・・・昔の「現地挽き(製材しただけの板)」という響きは残念ながらもう聞くことは出来ません。。。




さて、今まで80%:20%ぐらいであった厚板と薄板の割合を、今回から約「50%:50%」にまで引き上げます。簡単に書いていますが、この比率を変えるということ自体、実は非常にリスキーなことなのです。なぜかというと、ほかに使い回しが利かないからです。厚い板であれば割ったり削ったり出来ますが、いったん薄くしてしまうとそうはいきません・・・しかし、リスクを負い、しかも生産性・作業性を落としてまでも私たちが「変化」にこだわったのは、ほかでもなく「アガチスの需要を守るため」。ただそれだけなのです!




前置きが長くなりましたが、今回は特に学校教材用(12mm×210mm×1200mm)をメインターゲットとした物づくりを見ていきます!上記のサイズが最終仕上がりのため、製材指示は(17mm×215mm×2600mm)になります。ちなみに、長さは2枚取りできる長さで挽かせることで少しでも生産性を上げる工夫をしています。また、乾燥する過程での狂いや削りしろまでを見込んで、少々余裕をもったサイズで製材します。




では、ここから、具体的に写真を交えながら、どのようにして薄板を製材していくかを見ていきます。
学校教材のソリッド(1枚板)を作る場合は丸太の選別次第で、生産高が大幅に変わってきます。ちなみに、BOARDを挽く丸太と教材用丸太の選別は「太さ」を基準に行います。アガチスという木は直径1メートルを越えると節やアテ、割れなどの欠点が多いため、あまり長い板は取れません。そのため、1メートルを越える丸太を主に教材用として選び製材していきます。尚、BOARD系主体の製材の様子はこちらをご覧下さい⇒http://d.hatena.ne.jp/takiguchilumber/20100203/1265180760




丸太の玉切り〜盤台揚げ
丸太を2600mm(1200mm×2枚取れる長さ)でカットして、製材ラインに乗せます。

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製材(大割り機=全自動送材車付き帯鋸盤)
教材用の板をターゲットに製材する場合、ポイントはその「幅」にあります。BOARDと違い、幅が210mmに決まっているわけですから、その幅がポニー以降の工程で狙って取れるようにある程度の厚みの盤を挽いていくのです(今回は85mm〜230mm厚程度の盤。これは他の取り合わせアイテムにもよるので一定ではありません)。写真を見ながらイメージしてみてください!





明らかにBOARDの製材とは違うのがお分かりいただけると思います(上から4列目以降で150mm厚の盤を挽いているのがわかりますか?)。ある程度の厚みの盤を挽いて、次工程のポニーで幅を決めテーブルで一気に厚み17mmを挽きあげるという流れになります。この先の流れに関しては、また次回にしますが、いかに手間がかかるかちょっとずつお分かりいただけたかと思います。製材からいろいろな加工工程を経て最終的には、日本の子どもたちの手に届くわけですが、現地での物づくりにまつわるドラマも子どもたちには教えていきたいものです・・・


■K平■