リクシルの衝撃


住生活グループによって立ち上げられた、建材・住設機器大手の「リクシル」が勢いを見せ付けていますね。今年の秋には、日本の住宅資材メーカーである「ハイビック」を完全子会社化する予定、というニュースが材木業界に衝撃を与えました。まさに、「黒船来襲」と言っていいかもしれません。

住宅資材業界は、新設住宅着工戸数、リフォーム需要の低迷に加え、将来的な人口と世帯数の減少で厳しい市場環境が予想される。住生活グループ側は新たに取り扱いを始める木材製品部門に力を入れられ、ハイビック側は同グループの商材の取り扱いや販売拠点網を生かした売り上げ増など、経営統合によるシナジー効果を見込む。(下野新聞の記事より


日本の住宅着工数は、2006年に129万戸と近年のピークを記録したものの、急激な景況悪化の影響と人口減少の影響から、09年には80万戸を下回る状況です。総人口の減少に加え、2015年には世帯数もピークを迎える見通しで、今後の長期的な住宅市場の縮小は不可避だと言われています。が、とはいっても80万戸の市場がわるわけですから、やはり大きい。

こうした大手の住設機器の会社の「攻勢」に、私たち木材業界は連戦連敗。なかなか効果的な打開策を打ち出すことができていません。リクシルなど大手企業が作る既製品は、納期も早く、値段も手ごろ、何より見た目が美しいですし、技術のない今の大工さんでも簡単に作ることができる。すばらしいと思います。

一方、私たち「無垢の木材」は、ぬくもりがある。経年変化が美しい。やはり手触りがいい。というくらいのメリットしか発信できていないのが現状で、やはり、現代人の住宅のニーズに応えているとは言えない。今の大工さんにとって、癖の強い無垢の木材は、“使いたくない材料” になってしまっているのでしょうか。


リクシルのトップブランド「トステム」ひとつとっても、以前は「サッシの会社」くらいのイメージしかありませんでしたが、現在は、窓枠だけではなく、扉や棚、クローゼットに至るまで、「建具」関係全体をプロデュースするようになってきています。私たちのメインの商品「アガチス」も、用途の多くは「建具」ですから、看過することもできません。

リクシルのホームページをみてみると、実に単純明快。価格もはっきりと出ていますし、インターネットですぐに購入することができます。地元の材木屋に注文して、何ヶ月も先の納期に対応する必要もありませんし、変なしがらみもありません。流通体系が、お客様(今の大工さん)が欲しがるように、よくデザインされているわけです。

私たちも、お客様から「既製品が強いから、無垢は売れない」という嘆きをよく耳にしますが、「無垢だからしょうがない」という論を言い訳にせず、やはり、使い手(大工さん)の使い勝手を考えたシステムというものがあって然るべきなのかもしれません。複雑な流通が、無垢材のよさを伝えきれない大きな要因になっているような気がします。



そしてやはり秀逸なのがホームページ。今の施主さんは皆、ググって情報を集めます。ホームページの出来如何によって、売れる売れないが決まってしまうといっても過言ではありません。リクシルのサイトは写真もきれいですし、施主さんも完成した姿を想像しやすい。施主も大工も、ここでなら「イメージできる」わけです。

リクシルの販売戦略には、住宅設備メーカーの英知が集約されている、といってもいいでしょう。中小企業には難しいことばかりですが、ライバルのことはよく知っておいたがいい。住宅着工数が減る中で、ますます既製品に集中する「建具業界」ですが、アガチス、雲杉を愛してくださっている方のためにも、業界全体でのPRと、作り手を意識した流通体制の構築に尽力していきたいと思います。




K松