アガチス通信vol.46 〜スラウェシ島・ポソ訪問記3〜

無事にアガチス立木との対面を果たし、実際に動いている現場の状況も確認できたことで、一応今回のポソ視察の最低限の目的は達成出来たと思います。しかし、ハルマヘラ島同様、伐採環境が年々厳しさを増している現状を見るにつけ、「安定供給」に関して少々の不安を抱えたのもまた事実です。それは、私たちのプロジェクトが「天候」という不確定要素のもとに成り立っていること。そして、年々山の奥へ奥へと切り込んでいる伐採エリアにおいて生産をすることで(つまり搬出距離が伸びることを意味する)、道づくりや搬出にそれなりの時間と労力が見込まれるのが明らかだからです。また、コスト面においても搬出距離が延びることでその分道作り費や機材を動かすための燃料費などの増加などが見込まれます。加えて機材の老朽化に伴うメンテナンスなどにも私たちが考えている以上にお金がかかっており、今までと同じやり方で伐採を続けようと思えばそれだけで生産コストはさらに高くつくことになります。こういった状況から、私たちの商売が年々不利な状況に追い込まれていることは否めませんが、アガチスに拘っていく以上はこういった諸問題を想定したうえで、現地の生産者と一体となって安定供給がなされる体制を早急に作り上げていかなければなりません(参考までに、下の写真はマレーシアで行われているヘリコプターを用いた出材方法です。インドネシアにおいても今後の厳しい搬出環境を考えると、最も合理的な搬出方法と言えるかもしれません。現地のサプライヤーにはこういった提案も併せて行っていきたいと思います)。





ここからは前回までの話の続きを少々・・・
時計の針はすでにお昼1時過ぎ。朝からたいした食事もとっていなかったこと、そしてアガチスの森を縦横無尽に歩き回ったこともありお腹はペコペコ。そんな私たちの様子を察したドライバーの計らいで、伐採エリア近くにある現場作業員たちが暮らすキャンプに寄りお昼をいただくことに。前回のハルマヘラ島のキャンプにおいてはいろいろな洗礼を受けておりましたので、「キャンプ」と聞いて特に動じることはなかったのですが、それにしてもキャンプというものはどうしてここまで過酷な環境なのでしょうか・・・正直、ポソのキャンプはハルマヘラ以上に厳しい印象を受けました。。。薄い木の板を組み合わせただけの掘っ立て小屋が1つ(ミーティング兼来客用部屋と調理場)と無造作に置かれたコンテナが3台。当然風呂やトイレはなく、キャンプから歩いて2分ぐらいのところに流れる川の水をすべての生活用水として使っているとの事でした。こういったロケーションの中で作業員に与えられているのは、薄い板で仕切られただけの畳2枚分程度のスペース(1部屋あたり)のみ。覗かせてもらったマネージャーの部屋は最低限の生活用品だけが雑然と並んでいるだけでのとてもシンプルな空間でしたが、壁に張られている金髪女優のヌード写真が妙に生活感を引き立たせていてとても印象的でした(万国共通、男という生き物はそういうものです)。電気は夜のみ自家発電で灯すそうで、薄暗いランプ1つを頼りに読書をするのが楽しみなんだとか。「2泊以上は無理だなぁ・・・」なんて事を考えながらも、「彼らがいるからこそ、アガチスがある」という事実に感謝せずにはいられませんでした。。。そうこうしているうちに、お昼の準備ができたという事で、掘っ立て小屋へ案内された私たち。ラマダン中という事もあり、食事ができない現場作業員たちに少々気兼ねしながらも、やはり空腹には勝てずお腹いっぱい頂いたのは言うまでもありません(ハルマヘラと全く同じ食事内容には驚かされまた・・・)。





潤沢に原材料の手当てができる時代はとうに過ぎ、少ない原材料を中国やインド、はたまた成長著しいインドネシアローカルなどと奪い合う時代です。自然環境保護や合法木材の取扱いも強化され、これからはより「供給減、需要過多」の流れが強まるでしょう。加えて、原木価格・人件費などの高騰で生産コストは右肩上がりで、物価が下がり続けている日本国内との温度差をどうやって埋めていくかという問題もクリアーしなければなりません。今回ハルマヘラ島、スラウェシ島・ポソの2か所の伐採現場を自分の目で確認し、見たこと感じたことを有りのままにズラズラと書いてきましたが(結構、悲観的な内容が多かったかも・・・)、「アガチスのポテンシャルがまだまだある」ことも確認でき、やりようによっては長期的な絵を描くことも十分に可能だということも分かりました。入荷が悪く、アガチス離れが進んでいることは重々承知しておりますが、それでもまだアガチスを待ってくれている多くのお客様がいる限り、現地と心を1つに、1日も早く1日も長くアガチスを供給できるように前向きに取り組んでいくことをここにお約束し、ポソ訪問記を閉じたいと思います。



(林内で堂々と立ち続けるアガチス原木と)



〜完〜

■K平■