長期優良住宅へ寄せられる期待

Aです。昨日、取引先の商社で開催された「お得意様の集い」なる行事に参加してきました。メインの議題は「長期優良住宅への対応について」と「2010年(1-12月)の住宅着工予想とその根拠」。ということで、今回はそれについてちょっとコラムめいたものを書いてみようと思います。


‐長期優良住宅がもたらすメリット
「長期優良住宅」とは、ズバリ"丈夫で長持する、環境に配慮したECO住宅"ということです。多くの住宅メーカーもこの言葉を売り文句にしているようですし、自然環境への取り組みがますますクローズアップされる中、こうしたECO住宅に関心が集まるのも当然の事といえるでしょう。

この動きをさらに後押しするのが、この住宅のベースとなる法律である「長期優良住宅法」という法律なのですが、実はこの法律、遵守する義務がないにもかかわらず、「長期優良住宅」に認定されると様々な優遇制度が用意されているのです。

こうした優遇制度は政府の期待の表れとも言えるわけですが、「長期優良住宅」の認定数も順調に伸び、今や戸建住宅着工棟数の20%を占めるまでになっているようです。住宅業界全体が「長期優良住宅」の風に乗っているといっても過言ではありません。参考までに、施主と生産者のメリットを挙げてみますと、

<施主メリット>
・住宅ローン減税
・投資減税
・登録免許税(保存登記・不動産取得税)減税
住宅金融支援機構の商品であるフラット35S(金利優遇期間20年タイプ)が利用出来る


<生産者メリット>
・長期優良住宅先導的モデル事業として、補助金(新築上限)200万円が貰える
・長期優良住宅普及促進事業として、補助金100万円が貰える


もちろん、自然の素材を使うわけですから地球にも優しいというメリットも当然あります。また、この長期優良住宅を推進していくことは、木材業界にとっても好影響があると考えられます。そのメリットを自分なりに考えてみました。

(1)住宅の設計性能評価項目の中に「構造躯体の耐久性の確保」というものがあるが、この評価を高めるには当然品質の良い構造用木材、すなわち価格の高い商品を使わなければならないので、売上増に繋がるのではないか?
(2)住宅の付加価値を高めるために、内装材が従来の石膏ボード+ビニールクロスから、木材の表わし(横架材+天井板+羽目板+フローリングの使用)へ徐々にシフトしていくのではないか?
(3)住宅メーカー/大手ビルダー/大工・工務店等の生産者は、上述した補助金が受けられる。

これらの動きが本格化すれば、多少なりとも業績に好影響があるのでは?と考えています。



‐業界全体の見通しは甘い?
とはいえ、「2010年(1-12月)の住宅着工予想」についての木材業界の見通しはちょっと甘いのではないかと言わざるを得ません。今回の会合で、会場の参加者にアンケートが取られたのですが、1番多かったのは80万戸という答えでした。

ちなみに私は66万戸と答えており、当然(?)ながら1番低い予想でした。個人的な意見ですが、80万戸というのは正直かなり楽観的ではないかと思います。今の経済状況は、体感的なものですが月を追う毎に悪くなっており、少なくともあと1〜2年はこういった状況が続くのではないかと思われます。もちろん長期優良住宅に寄せられる期待は大きいのですが、それだけで楽観できるほど状況は甘くないと思います。

最悪な見方をベースに考えるとすると、今年の月次で最低の新設住宅着工戸数は8月の59,749戸。これを単純にx12すると716,988戸となります。この数字を見れば、66万戸という表現は少々オーバー過ぎるにしても、80万戸という数字は甚だ甘い見通しのような気がします。


しかしながら、この状況を指をくわえて傍観するわけにはいきませんので、弊社としても様々な取組みをしています。(1)新商品の開発&販売推進、(2)国産材の商品化、(3)植林木と未利用樹種の集成材等のエンジニアリングウッド化による有効活用、(4)顧客の新規開拓を含めた新たなるネットワークの構築などですが、何とか現状を打破すべく精一杯努力している次第です。

「長期優良住宅」は、上に挙げたようにさまざまなメリットを生み出します。しかしながら、この政策に安住しているだけでは木材業界を活性化することはできません。当然の事ながら、業界内外を巻き込んだ「木材の推進」を進めていくことがもっとも重要なテーマです。

その意味で、この業界レポートが何かの役に立てば幸いです。今後も可能な限り定期的に(?)発信していきたいと思います。至らない点も多々あるかと思いますが、ご指導ご鞭撻宜しくお願い申し上げます。
■A■