tlinks 「茨城木工の将棋盤・碁盤」

滝口木材が取り扱う素材を実際に使って頂いているお客様や商品を紹介していくことで、「Tree(木)のLink(リンク)」を広げていこうというこのコーナー「tlinks」。今回は、将棋盤や碁盤を作らせたら世界一、日本が誇るトップメーカー「茨城木工」をご紹介します。


tlinks 第2回 茨城木工の将棋盤・碁盤


アガチスを使った高級将棋盤 採用素材:インドネシア産アガチス


-職人と木が織り成す工房の音色
茨城県と千葉県の県境、鹿島灘に注ぎ込む利根川の流れを間近に見られる茨城県神栖市。その街の郊外に今回紹介する会社があります。およそ15人の社員で、年間20万枚もの将棋盤・碁盤を生産している日本のトップメーカー「茨城木工」です。

もともとは鹿島灘特産のはまぐりの殻を使った碁石を生産していた同社。折からの漁獲量減少もあり、将棋や囲碁をより多くの人に楽しんでもらいたいと、およそ30年ほど前から、本格的に将棋盤や碁盤の生産に取り組んできました。

工場をのぞかせて頂きました。人の声や電子音はほとんど聞こえず、木を切る音、板を重ね合わせる音、色を塗るハケの音だけが、静かな緊張感をまといながら工場の中に響き渡っています。懐かしくもあり、軽やかでぬくもりのあるその音は、自然の素材と職人たちの熟練の技術が織り成す木の音色。「工場」というより、まさに「工房」ならではの音でした。




色が塗られ、乾燥のために整然と並べられた将棋盤



木を切る音と、切られた木を重ね合わせる音が静寂の中に響き渡る



一枚一枚、職人の手によって盤に色が塗られている



-使う人あってこその盤
将棋盤に適しているのは、カツラやカヤ。美しい木目や使うほどに奥深くなる色は「工芸品」と呼ぶにふさわしいものがありますが、高級盤になると高いもので一式300万円、安いものでも一式数万円はしてしまうのだそうです。競技人口の増加には、なんとしても、気軽に楽しめる二つ折りの普及盤が欠かせませんでした。

そこで、同社では比較的手軽に入手できる「アガチス」に着目。アガチスは別名「ナンヨウカツラ」と呼ばれているように、カツラと性質が良く似ていて、将棋盤や碁盤を作るのにも適していたためです。軽く丈夫でクセも少なく、使うほどに手になじむ。現在では、普及版のほとんど全てがアガチスで作られ、同社が作る普及盤の日本でのシェアは80%にも及んでいます。



まさに「工房」ともいうべき生産現場。忙しさと静寂が同居している



材、塗料、機械、道具、一つ一つに職人のこだわりが隠されている



-木の音色を伝える
何十年、何百年といった歴史を刻んできた木。丸太から製材され、さらに長期間の乾燥を経て、材はようやく工房に運ばれます。そこで寸分の狂いなく、決められた大きさにカットされ、色が塗られ、そしてまた乾燥へ。乾燥が終わると、盤にはまっすぐに目盛りが入れられ、最後にロウが塗られます。一枚一枚、気の遠くなるような手間がかけられているのです。

「パチ」っと打ったときの、何ともいえない贅沢な音。その音は、職人たちが工房で聞かせてくれたあの音にもよく似ています。何百年という時を刻んできた木の音。茨城木工は、日本伝統の娯楽の楽しさだけでなく、将棋盤や碁盤を通して、木の音をも現在に伝えているのです。あなたが手にしたアガチスの将棋盤にもきっと、その「木の音色」が刻まれているはずです。


・茨城木工(株) 
〒314-0341/住所:茨城県神栖市矢田部764-10/Tel:0479-48-0034
URL:http://www.ibamoku.com/