アガチス通信 vol.11 製材のいろは・その2

K平です。

昨夜は、珍しくいわきでも雪が降りましたよ。いわきは別名「東北の湘南」とか「日本のハワイ」とか言われているだけあって、冬も比較的温暖で雪が降ることなどめったにないのですが、よっぽど寒かったって事ですね。まだまだ寒い日が続きそうですが、風邪など引かないように気をつけましょう!


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さて、前回は『製材のいろは』という事で、丸太から製品が出来るまでの一連の流れを『大根』になぞらえて見てきましたが、今回はもう一歩踏み込んで『製材』という工程そのものをクローズアップしてみようと思います。

「製材」とは、盤台上げに始まり、大割り〜中割り〜小割りまでの工程のことを言います。全て1つのラインで繋がっていて流れ作業で行われます。ですから、基本的に1本の丸太をラインに投入すると最短で大割り〜中割りの2工程、最長でも大割り〜中割り〜小割りまでの3工程を経るだけで板が挽きあがることになります。意外と効率よく出来てますよね。



上の写真は製材ラインを最終ライン(小割り付近)から撮ったものです。一番奥のど真ん中に見えるのが大割り。そしてその両サイドに中割り2機。手前の4機が小割りです。約500坪程度の敷地に6台の機械が効率よく配置されています。このラインで製材が行われているわけです。

では、写真を交えながら説明してみたいと思います。



第1工程 「盤台上げ」


まず、丸太は『盤台』という製材前の待機所に置かれます(写真・左)。製材が始まると盤台には常時5、6本の丸太がスタンバイしている状態になります。製材が進むごとにリフトマンがフォークリフトで丸太を補充し、作業が途切れないようにします。右側の写真は、盤台を正面から撮影したものです。イカついですね〜。



第2工程 「大割り」(通称ブレイクダウン)



盤台から送られてきた丸太は、『全自動送材車付き帯鋸盤』という製材機の送材車(台車)部分にセットされます。さぁいよいよ製材開始です。この機械の仕組みはというと、固定された“帯鋸(おびのこ)” と呼ばれる高速回転するのこぎりに向かって、丸太を乗せた台車部分が前後に移動することで行われます。台車が前後に移動することで、高速回転する帯鋸に材が押し付けられ、丸太がきれいにカットされていくわけです。

基本的に大割りにおいては、丸太を1/4サイズ(扇形になるのがイメージできますか?)に挽き落とします。この工程で求められるのは何といっても「精度」。このため、補助的役割として鏡とレーザーが用いられ、手前の芯と反対側の芯がずれないように調整されます。結構原始的ですよね。



第3工程 「中割り」(通称ポニー)


大割りによって1/4サイズになった丸太は、今度は中割り工程へと送られます。ここでは『軽便自動送材車付き帯鋸盤』という機械を使い、幅が広い板(幅15センチ〜30センチ)を挽いていきます。機械のしくみは大割りで用いた『全自動送材車付き帯鋸盤』と同じで、それを少々小型化したものです。

ちなみに大割りと中割り工程にはハンドルマンと呼ばれる機械を操作する専門のスタッフが就いています。熟練された彼らの目利き(材の素性をつぶさに判断する能力)によって製材は進められます。木材というのは “生きた” 材ですから、1本1本性格が違います。ハンドルマンは、その性質やクセを瞬時に判断しながら、もっとも有効的に材を使えるよう、臨機応変に機械を操作していきます。



第4工程 「小割り」(通称テーブル)


中割り工程で15センチ幅程度まで製材した1/4サイズの丸太(通称「サンコバ」といいます)が、第4工程の小割り工程へ送られてきました。ここでは『自動ローラー帯鋸盤』という機械を用いて幅15センチ以下の板や更に細かい棒材まで、無駄なく取っていきます。ここまで終えると、あんなに太かった丸太がやっと板状になって出てくるわけです。ここから、さまざまな加工がなされ、日本へと輸出されるわけです。



なんとなく分かりましたか?

言葉よりも写真を見て何となくイメージが湧けばそれでいいと思います。ただ、前回も書いたように、この工程が会社の命運を握っていると言っても過言ではないくらい重要な工程なのです。製材とは、木材の価値を決めるうえでもっとも重要な工程なのです。しかし、かつての私がそうだったように、木材業界の人でも意外と知らない人が多いのではないでしょうか。

というのも、昔は日本にもいたるところに製材所があり、小さい頃から「製材」を目にする機会がありましたが、日本より海外のほうが安く上がるという理由から、海外で挽いたり、あるいは海外で挽いた製品を買い付けてくるというスタイルに変わってしまったからです。

だから、(私もそうですが)製材について勉強するには現地に行くしか方法がありません。これでは、今後国産材が脚光を浴びたとしても、若い世代に製材の知識が継承されません。そして、材料を上手に活用できないという弊害が必ず起こります。木材を取り巻く環境の見直しは日本における喫緊の課題であることを付け加えて、今日のアガチス通信を終わりにしたいと思います。
■K平■