日本の山が狙われる!?水資源争奪戦

K平です。

先日、産経新聞で「日本の水と森、むさぼる外資」という記事を読み関心を抱いていたところに、テレビ朝日の「世界の子供がSОS!!仕事人バンク!」(11日・19時〜)という番組でウガンダの子供たちの姿を見て、世界で起きている水不足の現状とそれにまつわるグローバルな水ビジネスの潮流をひしひしと感じ、とても人事(ひとごと)とは思えませんでした。と同時に危機感さえ覚えました。

今回は私たちが生きていく上で欠かすことの出来ない「水」と密接に関わっている「山」の働きと、その売買の対象になっている「山」をめぐる動きにについて考えていこうと思います。

産経新聞の記事を抜粋〜
埼玉県や山梨県、長野県、岡山県の水源に近い山林について、中国などの外国資本が買収を打診してきていることが、東京財団がまとめた「グローバル化する国土資源(土・緑・水)と土地制度の盲点」と題した調査報告書で明らかになった。類似した事例は三重県大台町の水源林をめぐっても確認され、問題となっている。・・・


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日本で生活していると「水不足」を感じることはまずありません。蛇口をひねればキレイな水が出てくるし、大抵の場合そのまま飲むことが出来ます。そんな恵まれた環境にいる私たち日本人にとって「水不足」は他人事としてしか捉えられていないと思います。


<森林の役割とその価値>


森林には大別すると2つの機能があります。
(1)木材やキノコなどの林産物を供給する経済的機能
(2)自然環境を保全したり災害を防止したりする公益的機能

かつて林業が経営的に成り立ち木材生産が盛んに行われていた時代には経済的機能が重視されていましたが、近年では台風や集中豪雨による水害や土砂災害の多発や地球環境問題もあって公益的機能に対しての社会的な関心が高まっています。



(1)水源涵養機能 29兆8454億円  
森林の土壌が降水を貯え河川へ流れ込む水の量を調整して洪水や渇水を防ぐと同時に土壌を浸透する過程で水質を浄化する役割。
(2)土砂流出防止機能 28兆2565億円   
森林の下層植生や落葉等が地表の侵食を抑制する役割(森林は流れ出す土砂の量を荒廃地の1/150に抑えます)。
(3)土砂崩壊防止機能 8兆4421億円   
森林が地下に根を張り巡らせる事により土地の崩壊を防ぐ役割。 
(4)保健休養機能 2兆2546億円
森林が人々に安らぎを与え余暇を過ごす場として果たしている役割。森林は美しい景観を作り出し人々のレクリエーション活動や教育の場を提供してくれます
(5)二酸化炭素吸収機能 1兆2391億円   
二酸化炭素の吸収や酸素の供給を行い大気を正常に保つ役割
(6)化石燃料代替 2261億円
木材を利用することで鉄やコンクリートに比べて少ない二酸化炭素放出で住宅を建設できる役割
(7)野生鳥獣保護機能 3兆7792億円         
森林の恵みを糧に生きる野生動物の生命活動を補助する役割




(H13年日本学術会議答申書参考)


本の森林が1年間に生む価値は、合計なんと74兆円!

74兆といわれてもピンとこないかも知れませんが、2010年度の政府予算の歳出92.3兆円(財源として税収37.4兆円、その他収入10.6兆円、公債金収入44.3兆円)と比較して考えると、いかに森林の果たす役割が大きいかが分かります。もしこれらの役割が機能せずに、74兆円が国の予算に計上されたらと考えたらゾッとします・・・




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前置きが長くなりましたが、そんな日本の森林が中国をはじめとする外資に狙われています。

理由は大きく分けて2つ。
(1)山林が不当に安い
1ヘクタール(3000坪)当たりの林地価格は用材林地(人工林)で55万円、薪炭林地(雑木林)で36万円と17年連続の下落で昭和49年の水準より安い(2008年3月/財団法人日本不動産研究所調べ)。まともに山林経営すればとても採算が合わないが、安い山林を購入後、皆伐し、非合法だがその後の植林を放棄すれば利益が見込める。そのため、投資目的の不動産会社が経営難に陥った山林所有者から山を購入し、立木だけを伐採して山を放置するケースが各地で増加している。

(2)水資源の確保
世界の水需給が逼迫していく中、水資源の源である森林資源、すなわち水源林を確保しようとする動きが活発化している。特に中国でのペットボトル水に対する需要が1997年から2004年までの間に約4倍と急速に伸びている。また世界の大手水企業の水源地の利権獲得のための買収の動きや、ウォーターファンドといった投資マネーの流入も急増している模様。
森林の持つ公益的機能を私達の生活レベルで考えた時、森林は個人や企業の私有財産であると同時に我々のライフライン、つまりインフラとしての性格を担っているのです。日本の森林が外資の手に渡るということは、私達の生活が脅かされるということです。これだけは何が何でも阻止しなければなりません! ただ、現行の法整備はかつての国産材需要が高く林業経営が盛んだった頃に制定されたものではっきり言って不備が多い・・・


<日本の土地制度の問題点>
(1)地籍調査が48%しか完了していないため所有権の移動を自治体が十分に把握していない
(2)日本における土地所有権は極めて強く、一旦外資に所有されると手放させるのが難しい
(3)法制度の不備が顕著で、森林法では民有林の売買に関する規制が無く、所有者は山林を自由に売買できる。また国土利用計画法においても1ヘクタール未満の土地の売買は届出義務すらなく、たとえ外資による買収が進んでも把握できない

もちろん上記以外にも林業家の経営難、不在村地主の増加による間伐放棄・植林放棄の急増など本質的な部分で外資の入り込む隙を与えているのも大きな要因ですが・・・


<今後の課題>


(1)法整備の見直し 国民の安心と安全が守られる事が大前提。目先の利益ではなく、長期的な展望が必要。 
(2)林業の立て直し 国からの補助金があっても成り立たない現状を見直し、抜本的な改革が必要。
(3)国民1人1人の意識改革 「山」と「水」、「山」と「人間」との関わりを知ること。節水を心がける。


私たちにおいしい水を提供してくれる山。自然災害から身を守ってくれる山。そして、再生可能で地球環境にも優しい資源である木材を生んでくれる山。私たちにたくさんの恵みを与えてくれる「山」をみんなで守ろうではありませんか!


■K平■