アガチス通信vol.32〜スラバヤ現地レポ〜

Selamat Sian!(こんにちは!)
K平です!



スラバヤも本格的に雨期入りしたようで、午後になると連日雨が降っています。
この時期の湿度は半端ではなく、不快感200%といったところです・・・
とはいえ、ようやくこちらの暑さに体も馴染んできたので、張り切っていきますよ!




さて、先月は製材工場を舞台に、製材の様子やアイテムによっての製材方法の違いなどについてレポートしましたが、今回は舞台を加工工場に移して製材後の板がどのような加工工程を経て輸出されるのか、可能な範囲でレポートしていきたいと思います。



<作業状況>
(1)21日現在BOARD関係は、40mmが70%程度まで検品終了し今週後半から残り30%の検品予定です。36mmは全量検品終了、34mmは50%程度終了、昨日から24mmの検品が始まっています。今週中には全量検品を終わらせ、早ければ来週早々にコンテナ積みを始める予定です。およそ7コンテナ(210〜220㎥)程度にまとまると思います。

 




(2)加工品は額縁用材の仮検品・モルダー加工、教材の特注サイズ(15mm×30mm×600mm)および学校教材3枚剥ぎ材をサンディング中です。メインの学校教材用材1枚板もK/Dから工場に入荷しましたので明日からは加工が始められると思います。




さて、過去30回に及ぶアガチス通信を通じて、アガチス材の魅力をいろいろな角度からフォーカスしてきましたが、今回は思い切って「アガチス材の個性(欠点)」に焦点を当ててみたいと思います。欠点ではなく、あえて「個性」と表現します。私たちが扱う木材は魚などと同様「生もの」です。ですから育った環境によっていろいろな個性が出てくるわけです。堅かったり、曲がっていたり、熟しすぎて枯れてしまったり・・・これらの個性をいかに料理するかが私たちの腕の見せ所です!


(1)陽疾(アテ)

分かりずらいかもしれませんが、上の写真のちょうど板の真ん中部分に通っている幅3センチ程度の筋、これが「アテ」です。先程も書いたとおり、木は生ものですから、人間と一緒で生育場所や環境によって1本1本癖や性格が違います。「アテ」は特に山の急な斜面に生息する木に強く表れる特性なのですが、アガチスは標高1000メートル付近に多く生息しており、この「アテ」が非常に出やすい木なのです。山の斜面に対して垂直に伸びようとする木の特性が、肥大生長(その外部要因から身を守ろうとするために異常に鍛え上げられた部分とでもいいましょうか・・・)という形で表れたわけです。「アテ」の部分は反りや狂いが生じやすいため、検品では、最も気を配ります。


(2)ヤニ(シブ)

シブは木の樹液つまり脂です。写真の板全面に見える赤い筋、これが「ヤニ(シブ)」です。アガチスはナンヨウスギ科に属しているのですが、木の皮や実を見る限り「スギ」ではなく間違いなく「マツ」の仲間だと思います。マツもマツヤニと呼ばれる樹液を多く含んでいますが、上の写真の通り見た目の問題からとても嫌われます(色つきの塗装をしてしまえば問題ありません)。このヤニをいかにして取り除くかが十数年来の課題になっています。ただし、裏を返せば「脂が多い=木に粘りが出る」という見方もできなくはありませんが・・・


(3)赤ジマ

板の左側に筋状に通った赤い線、これが「赤ジマ」です。赤ジマもヤニの1種で、見た目が悪くなるため嫌われます。


(4)キスマーク

板の中央部に見える、赤模様、これが「キスマーク」です。キスマークもヤニの1種で、見た目が悪くなるため嫌われます。



(5)胴折れ(胴割れ)

分かりずらいかもしれませんが、板の右側に薄っすらと2本のひび割れが見えると思います。これが「胴折れ」で、丸太を伐採した際に、地面に倒れた衝撃で入るヒビ割れです。非常に見えずらいのですが、見落としがないように慎重に検品していきます。


(6)ピンホール

これは、虫食いによってできた穴です。「虫も食うほど新鮮だ!」と捉えることもできなくはありませんが、基本的に人の目に触れるような場所に使われることはありません。パテ埋めをすれば問題ないのでしょうが。。。非常に細かい穴ですが見落とすことがないよう、現地スタッフがしっかり目を光らせています!


(7)節

枝葉が成長する過程で幹に組み込まれていった部分が節です。最近は若い世代を中心に「節がオシャレ」的なムードになっており、節そのものに関してはだいぶ見直されてきている気はしますが、アガチスのノーブル感にはやはり好ましくありません。。。


(8)腐れ


これは辺材の部分に多く見られ、水分も養分も抜けきってしまった状況です。伐採してから長期間放置された丸太を製材するとほとんどの辺材部分は腐ってしまいます。ですから、木材において「鮮度」はとても重要なわけです。




といった具合に、これらの欠点が入らないように細心の注意を払いながら、板1枚1枚丁寧に検品します。ただし、これらの欠点は木の持つ「個性」であり、捨ててしまうにはあまりにももったいない。ですから、極力捨てるところがないように、削ったり・繋ぎ合わせたりいろいろと工夫を凝らして多様なアイテムを作っています。



昔は木の個性を見抜き、上手に使いこなす「匠」が数多くいたため、仮にこれらの欠点が多少混入しても今ほど騒ぎたてることはなかったそうです(先日のK松のレポートにあったように、今でもヤニを上手に使いこなしてしまう大工さんがいるということは非常に心強く感じます・・・)。とは言え、時代が求めているのは、規格化・統一化されたローコスト商品のようですから、1枚1枚個性が違い、しかもハイコストの無垢材で勝負する私たちは、あくまで本物にこだわり、「木の質」で勝負する以外ありません。ですから、国内で板を再加工して使う加工業者さんや大工さんの苦労を少しでも減らすことができるように、「質」にこだわってモノ作りに取り組んでいこうと思います!アガチスファンのみな様、年明けの入荷をどうぞお楽しみに!


■K平■