アガチス通信vol,41〜ハルマヘラ島訪問記2〜

翌朝、威勢のいい鶏たちの鳴き声とともに朝4時に起床。眠い目をこすりながら外へ出ると、さすがに山々に囲まれているだけあって一面に霧がかかりひんやりとした空気に覆われていました。1度大きく深呼吸をして新鮮な空気を目一杯吸い込むと不思議と眠気も吹っ飛び、体の芯からパワーがみなぎってくる感覚を覚えました。これが山の持つ壮大な自然力なのでしょうか。一旦目が覚めてしまうとじっとしているわけにもいかず、近くのログポンド(伐採した丸太の集材場所)まで散策してみることに。まだアガチスの丸太はありませんでしたが、1か月以内にはこのログポンド内にアガチスの丸太がごった返しているのが想像できます・・・


(沖合に停まっている船はニッケルを積む船/筏を組む際に使う道具)




散策から戻り身支度を済ませた後、簡単に朝ごはんをお腹に詰め込み(ラーメンライス!)準備完了。入山前、今まで私たちが受けさせていただいた数々の恵みに対して感謝の念を込めて山に一礼し、颯爽と車に乗り込みました。ジープの後ろには現場へ向かう数人の作業員も乗車しいよいよ出発の時を迎えました!




入山直後は起伏の激しい山道が続きましたが、道路は全天候型のオールウェザー道(砂利敷きのため水はけがよい)に整備されておりどんな急斜面でもスイスイ駆け上がっていきます。さて、丸太の生産をスムーズかつスピーディーに行うための条件の1つに「林道の整備」があります。特に雨の多いハルマヘラ島においてはこの道造りがしっかりとなされていないと、いくら丸太を伐採しても運び出すことが難しくなります。加えて、アガチスは標高2,000メートル以上の場所に群生しているケースが多く、急斜面・急勾配での作業は珍しくありません。そのため、伐採エリアまでの最短でかつ円滑に搬出が行える道造りというものは極めて重要なのです。今回視察したエリアに関しては、ほとんどのエリアがオールウェザー対応になっており、これからアタックしようとしているポイントの4キロ手前まではほぼスムーズに入山できました。


オールウェザー道路。雨期に入っても全く問題なし!)



軽快に山道を走ること約40分。伐採機材の待機所兼最前線の現場で働く作業員とその家族が暮らす15キロ地点のキャンプに到着。ここでは大まかな作業状況の確認と搬出機材の確認を行います。丸太の生産をスムーズかつスピーディーに行う2つ目の条件に「搬出機材の質と量の確保」があります。いくら搬出が楽なポイントであっても機材の生産キャパそのものが低ければ当然生産効率は落ちますし、機材が故障してばかりでも話になりません。特に最近では、機材の老朽化によって機材の維持・メンテナンスにかなりの費用がかかるケースがあり、場合によってはスペアパーツが手に入らないこともあり、そうなれば何千万もの費用をかけて新しい機材を投入する必要も出てくるわけです。丸太の生産にはいろいろとコストがかかっているのも事実として受け止めなければいけません。



*機材は左⇒右の順に上からグレーダー(道を平らに均す)、ペイローダー(丸太の揚げ下ろし)、ロギングトラック(丸太を運搬)、ショベルカー(砂利を運ぶ)、ブルドーザー(道を切り開いたり、ウィングを使い丸太を引っ張ることも)、ブルドーザーのメンテナンスの様子)



しばしの休憩をはさんだ後、車はさらに山の奥へと進んでいきます。15キロ地点の先からは道が二手に分かれていましたが、私たちはキャンプマネージャーの指示で比較的平坦なコースを選択しました。実はこの先が次回のアガチス生産エリアとなっているのですが、事情があり二方向からアタックしているとの事でした(回避したコースの方が距離は近いのですが起伏が激しく且つ道幅が狭いため雨期に入ると危険度が増すため道づくりを一時見合わせているとの説明がありました)。私たちが選んだ平坦コースは2度ほど川を渡る必要はあるものの、道付けも順調に進んでおり、残り4キロでアガチスの伐採エリアに到達できるとの事でしたので車で進めるぎりぎりのところまで進んでみることにしました。ちなみに、まだ道路整備が完全ではない赤土の道路は粘土質のため、雨が降り降り始めるとドロドロの状態になり大型の機材でさえも通ることが出来なくなってしまいます。


(川は雨期で水が増水しても問題なし/赤土は雨期に入ると心配なためオールウェザーへの転換が急務)



赤土の道路を3キロほど進んだ辺りで道は途切れていたため、私たちは車から降り歩行が可能な限り歩いて行くことになりました。山の中では聞いたことのない鳥の鳴き声とMLHを伐採するチェーンソーの音だけがこだましていましたが、聞いていて飽きのこないその音色は熱帯雨林ならではのものだったのかもしれません。。。「ここから約4キロ先にアガチスが群生している。」とのマネージャーの言葉に意気揚々と前進を試みましたが、「歩いて行くにはあまりにも危険すぎる。」と、マネージャーに制止され残念ながらアガチスの立木を見ることは出来ませんでした・・


(行き止まりになっている道の周囲では道造りと並行してMLHの伐採が盛んに行われていました)



ここまでを通して見えてきた事を少し整理してみます。
1つ目は年々山の奥へ奥へと伐採エリアが入り込んでいるため、丸太の搬出距離がかなり遠くなっている事。これにより、道路整備と機材を動かすための経費が余分にかかってきている。しかし機材自体は質・量ともに十分に確保されており、当面伐採を行うにあたっての不安は感じられない。
2つ目はアガチスエリアの手前に生息しているMLH(雑木の呼称で主に合板に使われる。比較的山の中腹に生えている)の値段が高騰してきたことで、MLHの生産だけでも十分に採算が見合い始めており、生産者側がMLHよりさらに奥地に生息するアガチスの伐採に対する魅力が薄れてきている。


(いたるところに油を保管するタンクがおいてあるが油の入荷も不安定になっている模様/MLHの伐採は道造りと並行して進んでいる)



アガチスの伐採現場に立ち会えなかったのは非常に心残りですが、そのロケーションやポテンシャリティーは十分に確認できたと思います。この日の夕方行われたミーティングの内容と自分なりのまとめは次回のブログでご報告したいと思います。



(山の高台からハルマヘラの海を一望)




最終回に続く

■K平■