アガチス通信vol.49 〜マレーシア・タワウ編その2〜


10月末からマレーシアはタワウでの現場に入っておりますK松です。こちらは毎日が真夏の陽気。すっかりと夏の皮膚を取り戻し、現地人と間違えられる日々です。

製材のほうですが、12月の入荷に向けて鋭意生産中です。アガチスファンの皆様を心配させている現状ですが、なんとか出荷にこぎつけられる見通しが立ってきましたところです。

丸太のクオリティについては、まずまずといったところでしょうか。ハルマヘラのような大トロはふんだんにはご用意できませんが、全体的に赤身の刺身は平均して合格点を与えられる、といったところです。


いかんせん、工場の設備などのハンデ、また、雨天続きの天気、停電などご当地電気事情、それから東南アジアならではの作業員のゆるい勤務態度など、さまざまなネガティブファクターによりまして製材に時間がかかっています。

現在34ミリから順次KDにかかっており、これが順調に進めば、リップ・クロスカットへと進み、11月末の出荷には間に合う計算です。どうかいましばらくお待ちください。

引き続きグッドニュース入りましたら、この場にアップを致しますので、よろしくお願いを致します。



さて、現場のレポートとは申しましても、私のような門外漢があれこれ講釈を垂れるわけにも参りませんので、少し工場の現状を、「人」の観点からお話させて頂ければと思います。

私は目下、ブレイクダウンに張り付き、製材を学ばせて頂いているわけですが、感じるのは、関わる人の多さ、です。




私のいるブレイクダウンの周りだけでも、帯鋸のオペレーター、製材の指示出しをする担当者、それに、出てきた材を積む作業員、幅や長さをチェックして記帳していく記録係がおります。

また、ブレイクダウンの次の工程、さらに小割りにしていくポニーという帯鋸の箇所にも同様に人員がおり、全体のベルトコンベアーの動きを統括するナビゲーター、積まれた材を運ぶフォークリフトのオペレーター、丸太を運ぶ爪のついた車のオペレーターもおります。

さらに、帯鋸の目立て担当、電気系統の修理をするメカニック担当、それぞれにマネージャーもおりますし、事務や経理も入れれば、実にたくさんの人たちで、一枚の製材品ができているわけです。現場に来ますと、やはりそのことに気づかされます。

そして、少年たちも、手伝ってくれています。




彼らにも家族がいるでしょうし、人生があり、夢も希望もあるわけです。アガチスの今回のプロジェクトが、これだけ多くの生活を支えているという事実に改めて驚くとともに、責任の重さを感じずにはいられません。

これだけの犠牲をともなって生産されるという事実。それが「ビジネスモデル」として今の時代にマッチしているのか、という問いには答える術も経験もありませんが、事実として、私も現地に入っております。私の自由な時間や、婚約した彼女とのスイートな時間も犠牲になっています。

この一点のみにおきましても、「そう簡単に値引きしてたまるか」という思いをひときわ強くしている次第です。


デフレだのなんだのと世知辛いわけですが、私のスイートな時間は別にしましても、工場でおがくずまみれになってアガチスを製材してくれるマレーシア人のために、そして、建材主流のこの時代にあえて逆らって
「アガチスを使いたい」と言ってくれる皆様のために、なんとかこのアガチスプロジェクトを成功させたいと、思いを強くしております。

とはいえ、便利を買い叩いた結果、コストが安いからと加速的に導入された原子力発電所の例もこざいます。どうか皆様におかれましては、アガチスの値段交渉はお手柔らかにして頂き、木材の振興、木の家の普及、南洋材の復権にお力添え頂ければと思います。

日本は寒くなりますが、どうぞご自愛下さい。ではまた、折に触れてレポートいたしたいと思います。


K松