恐るべし害虫〜ヒラタキクイムシ〜

K平です。



先日、営業先のとあるお客さんからこのような質問をされました。
「アガチスは虫食いの心配が無いの???」
気になりますよねぇ。買った材料が虫に食われたとしたら・・・



今回はこの「虫食い」について少々考えていきたいとと思います。
さて、先程の質問。結論から言いますと・・・
「アガチスは虫食いの心配がありません!!!」





いろいろな用途で使われる「木材」ですが、建築材として用いる場合は「虫害」に気をつけなければなりません。日本には木をエサにする害虫がたくさんいます。例えば「シロアリ」は土台や柱を中心とした構造材を食い荒らす存在として知られていますし、他にもナラ枯れを引き起こす「カシノナガキクイムシ」や倒木などの衰弱した木を狙う「ウスバカミキリ」などの名前は耳にされたことがあるかもしれません。

一方、私たちが取り扱っている「アガチス」をはじめとする南洋材は家具や造作材、フローリングなどに使われることが多いのですが、この用途で最も気をつけなければならないのが「ヒラタキクイムシ」という害虫です。木材に携わっている方であれば一度は耳にしたことがある名前だと思います。家具や建築材の特定の場所から粉末状の木屑が柱状に積もっているのを見かけたことはありませんか?これはすべてこの「ヒラタキクイムシ」の仕業なのです。




 




さて、このヒラタキクイムシの特徴ですが・・・
(1)広葉樹の辺材のみを食害する
ヒラタキクイムシが径の大きな道管を持つ広葉樹を加害するのは、成虫が産卵管を差し込める適度な大きさ(0.8mm以上)の細胞が必要なためであり、辺材のみを食害するのは、辺材には栄養分(でん粉、単糖類、たんぱく質など)があり、孵化した幼虫が育つ環境に適しているためです(あくまで木をエサにするのは幼虫だけで、成虫は食べません)。ちなみに、これらの栄養分は時間とともに変質するため古材は食害されにくく、新築後2年以内の被害発生が全体の80〜90%との統計がでています。



(2)乾燥材を好む
ヒラタキクイムシは湿潤状態に弱く、繊維飽和点以上の含水率の木材中では生育できません(尚、幼虫は穿孔性が強いが、別の材に移って再食入することはありません)。



つまり、私たちが取り扱っている「アガチス」に関して言うと、南洋材としては珍しい針葉樹であり
日本国内へ輸入後、このヒラタキクイムシに食い荒らされる心配はまずありません!





木材を虫害から守る方法としては、「加圧防虫」処理が一般的です。
加圧注入機に木材を入れ、機内を真空にして薬剤を注入し加圧していきます。
これによって、薬剤を木材内部まで十分に浸透させることができます。

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ただし、アガチスが全く虫食いしないというわけではありません。現地においては、立木(山に立っている状態)や伐採直後の時点で「穿孔性害虫(せんこうせいがいちゅう)=穴を開ける虫」に食われることがあり、それを防ぐために防虫剤を散布しています。

ただし、先程も書いたとおり針葉樹であるアガチスには道管はなく仮道管という細い管しかないため、害虫は卵を産み付けることが出来ません。ですから、食われてもそれは一過性のもので、それによって増殖するようなことはありません。ピンホール(虫食い穴)があると、木材としての利用価値はほとんどなくなってしまうため、丸太および製品を検品する時点でピンホールの有無には特に注意する必要があります。

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(アガチスのピンホール)




1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では木造住宅の虫害(主に蟻害)や腐朽の例が多数報告され、それらが初期の耐震性能に少なからず影響を与えたと言われています。一説では、蟻害による建物の損失額は直接間接を合わせると火災時の5〜10倍に達したとの報告もあったようです。とはいえ、木材が数百年から場合によっては数千年以上にわたって使用可能なことは実証されており、その性質を理解し適材適所で使うことで素材としての価値はより高いものになるはずです。あの悲惨な出来事から16年。。。改めて「木の使い方」と真剣に向き合い「木の良さ」を広めていきたいと思います。


追伸  あの惨事で不幸にも命を落とされた多くの方々のご冥福をお祈り申し上げます。合掌・・・



■K平■